2025年05月26日
『そんなに検査しないといけないですか?』
診療を行っていると、飼い主様からこのようなご質問いただくこともあります。
早期発見・早期治療のためには、早い段階の検査は重要であると考えています。
人は言葉を使えるので自分の口で症状を事細かく説明することができ、そのポイントに絞って診察・検査を行うことができます。一方で、当たり前ですが動物の場合はそれが出来ません。いつもに比べてどこがどのくらいつらいか、どう様子が違うのか、診察に来ていただいた短時間で全てを把握するのは簡単ではありません。
また、同じ症状一つとっても飼い主様によって説明の仕方も様々ですので、それをできるだけ理解するように努めなければなりません。
例えば【食べない】【吐く】【下痢してる】といった症状は胃腸炎や急性肝炎、急性膵炎、異物の誤食、腫瘍、子宮や卵巣の病気などその他の病気でも同じような症状が現れます。どこが悪いかわかっていればピンポイントでそこを検査することができますが、動物の場合は、疑わしいと感じた病気をある程度範囲を広げて検査をして除外していくことが大切です。たとえ血液検査で異常がなくても、それによって血液検査によって判断できる病気の可能性は低くなります。
加えて、上記のような症状があったとしても、一般的な身体検査で目立った異常がない場合は、点滴や胃腸薬などの対症療法にて経過観察することで完治する場合も多くあります。ただ、その経過観察中に状態が悪化したり残念ながら手遅れになる場合もあるのが現実です。なかには目にみえる症状はそれ程ひどくないのに検査によって緊急で手術が必要と分かるケースや特別な治療薬が必要と分かるケースもあります。そういった子をできる限り減らすために、適切な治療をするためにも早期の検査が重要です。
この記事を書いている最中でも早くに検査してよかったと思える症例が何頭も頭に浮かぶ上がりますし、逆に検査の同意を得られず手遅れになった動物たちの事も思い出します。
一方で、飼い主様にも様々な事情がある方もおられますので、できる限りご理解いただけるように説明した上で検査をしたり、全ての検査が難しくても一部だけでも検査を受けていただけるように努めてまいります。
どんな病気であれやはり早期発見早期治療が大切です。
早期の精密検査にご理解いただけると幸いです。
※赤い数値が異常値です。
左右の検査結果共に症状は食欲なし・数回の嘔吐だけ。
左のワンちゃんは血液検査に異常なく対症治療のみで回復。
右のワンちゃんはその夜に緊急手術のため紹介。今は元気に他の病気の治療のため時々通院されています。
右の結果のワンちゃんの方がやや触診でお腹触るのを嫌がっていましたが検査せずにこれだけの異常値を把握するのは難しい症例です。
こういった状態を確実に判断するために早期の検査が必要になります。